秋だった。
ガッと扉を開く音を聞こえ、要はノートから顔を上げた。相手を見、笑いながらボールペンを挟んだ片手で招いた。
「憲実さん」
「ああ」
「ちょっと待ってください。もうすぐです」
憲実は隣で座った。要もまた報告に専念した。
「そういえば、その、金木犀が咲いたな」
憲実が言った。
「そうですね。とてもいい香りです」
要はページをめぐった。
「要」
「なんでしょう」
憲実の目に尋ねたが、何かを言おうとした彼が、結局無口のままだった。
「ええと…」
「は、白木蓮は枯れたな」
憲実の言葉に要が見開いた。
「そうですが、もう十月ですよ」
彼はまた口を閉ざした。
「もう、どうなさったんですか。憲実さん」
「その、来年、一緒に見よう」
「白木蓮ですか」
憲実が肯いた。要は溜息をした。
「そうしましょうね」
❄️
初秋。
听见开门声,要从笔记本中抬起头。见到来人,笑着抬起夹着圆珠笔的手。
「憲実さん」
「ああ」
「ちょっと待ってください。もうすぐです」
憲実点头,走到桌边坐下了。要便继续写起报告来。
「そういえば、その、金木犀が咲いたな」
憲実说。
「そうですね。とてもいい香りです」
要翻过一页纸。
「要」
「なんでしょう」
要看向憲実,后者却好像忘了词,张口但不说话。
「ええと…」
「は、白木蓮は枯れたな」
「そうですが、もう十月ですよ」
憲実合上嘴。
「もう、どうなさったんですか。憲実さん」
「その、来年、一緒に見よう」
「白木蓮ですか」
憲実点头。要轻叹了一口气。
「そうしましょうね」